幕末に人斬り抜刀斎と呼ばれた男がいました。維新が終わると彼は姿を消し、十年後の明治十一年の東京に流浪人として現れます。腰の刀は刃が内側を向いた逆刃刀で、まともに振っても人を斬れません。

るろうに剣心 単行本表紙
単行本の表紙、AniList

この刀ひとつが作品の規則を決めます。剣心は二度と人を殺さないと決めていて、その決意が戦いのたびに試されます。相手のほとんどは殺さなければ止まらない種類の人物なので、そのつど殺さない方法を新しく見つけなければなりません。少年漫画の必殺技が、ここでは生かすための技として設計されています。

時代背景も飾りではありません。維新で勝った側の人間が新政府でどうなったか、負けた側がどこへ行ったかが繰り返し出てきます。志々雄真実は政府に使われて捨てられた人物であり、斎藤一は新選組から警察官になりました。敵の論理が剣心の誓いを正面から反駁する構造なので、京都編は今もシリーズの頂点として挙げられます。

作者は和月伸宏。1994年4月5日に週刊少年ジャンプで連載を始め、1999年9月21日に完結、単行本は28巻です。当時のアシスタントには『ONE PIECE』の尾田栄一郎や『シャーマンキング』の武井宏之がいました。

アニメは何度も作られていますが、最新のものはライデンフィルムが原作を最初から描き直した2023年版で、2023年7月7日から全24話が放送されました。

三十年前の漫画で今も崩れないのは、アクションではなくその後ろに残る問いのほうです。すでに人を殺した者がその後をどう生きるのかを、この作品は28巻のあいだ手放しません。

緋村剣心 キャラクター画像
逆刃刀を差した緋村剣心、AniList
神谷薫 キャラクター画像
道場を守る神谷薫、AniList
志々雄真実 キャラクター画像
京都編の志々雄真実、AniList
斎藤一 キャラクター画像
元新選組の斎藤一、AniList