ある夜、正体不明の生き物が高校生の泉新一の体に入り込もうとして失敗します。狙いは脳でしたが、イヤホンのコードに阻まれて腕から入り、右手の位置に居つきました。新一は人間のまま残り、右手だけが別の知性を持つことになります。
この失敗が作品の条件を作ります。ほかの寄生生物は人間の頭を乗っ取り、人のふりをして人を食べます。彼らにとって人間は食料であり、その判断に罪悪感はありません。一つの体で二つの種が会話しているのは新一とミギーだけで、だからこの漫画の議論の場面は、人間対怪物ではなく体を分け合う二人のあいだで起こります。
いまも引かれ続ける理由は、新一が人間のままではいられないところにあります。ミギーの細胞が混じるにつれ、彼は驚かなくなり、泣かなくなり、揺れなくなります。強くなる過程を成長ではなく喪失として描くのが、この作品の核心です。人を守ろうと戦うほど、人から遠ざかっていきます。
作者は岩明均。1989年11月22日から1995年12月23日まで講談社で連載し、全64話、単行本10巻です。三十年以上前の作品ですが、分量が短いので今でも一日二日あれば読み終えられます。
アニメはマッドハウス制作の『寄生獣 セイの格率』があります。2014年10月9日から全24話で放送され、時代設定を放送当時に移しているため携帯電話が登場するなどの改変が入っています。
この作品が投げる問いは今も有効です。人間が他の種を食べるやり方と、寄生生物が人間を食べるやり方は何が違うのか。漫画は答えを用意せず、最後まで押し切ります。



