第1話で、よしきは正面から言います。お前、光じゃないだろ。向かいに座っている側はあっさり認めます。山で消えた本物の光は戻らず、その席を埋めた何かが彼の顔と記憶をそのまま使っています。
ふつうのホラーなら、ここから退治が始まります。この作品は逆へ進みます。よしきは正体を知ったうえで関係を切れません。本物を失った悲しみより、偽物でも隣にいるほうがましだという気持ちが勝ってしまい、その選択を自分でも説明できません。物語の重さは怪物ではなく、この決断のほうにかかっています。
舞台は山に囲まれた小さな集落です。古い信仰と禁忌が残っていて、人がいなくなることに住民が慣れています。だから怖さの出どころが二つになります。光の席に入り込んだものも怖いのですが、それに気づいていながら静かに流す大人たちのほうがもっと怖いのです。
作者はモクモクれんで、2021年8月31日からKADOKAWAで連載しています。英語版はYen Press、中国語繁体字版は台湾角川が刊行しています。
アニメーション制作はCygamesPicturesで、2025年7月6日から全12話を放送し、日本国外へはNetflixが配信しました。原作の余白と音のないコマをどう移すかが難所でしたが、画面を埋めるのではなく空けておく方を選んでいます。
夏に読むといい作品だとよく言われますが、正確にはその逆です。蝉の声も田んぼの畦道も真昼の光も、読んだあとは落ち着かなくなります。



