桐山零は十七歳ですでにプロ棋士です。事故で家族を失い、父の知人の家に引き取られ、その家でも居場所を得られないまま一人で暮らしています。将棋が得意だからプロになったというより、将棋しか残らなかったからプロになった、という順序です。

3月のライオン 単行本表紙
単行本の表紙、AniList

物語は二つの場所を行き来します。ひとつは対局室です。静かで、時間が長く、負ければ次の対局まで一人でその敗北を抱えていなければならない場所です。もうひとつは川を渡った先の川本三姉妹の家で、食卓が用意され、先に食べなさいと言われ、余ったおかずを持たせてくれる場所です。零が回復していく速さは、後者のほうで決まります。

作者は羽海野チカ。明るい場面を描いていて、何の前触れもなくその下の底を見せるのがこの人の特徴です。学校でのいじめを扱う区間、家族の病を扱う区間が長く挟まり、将棋の対局はそのあいだで人物が自分を確かめる場として置かれます。

連載は2007年7月13日に白泉社のヤングアニマルで始まり、現在も続いています。第4回マンガ大賞の大賞、第35回講談社漫画賞、2014年の手塚治虫文化賞マンガ大賞、2021年の文化庁メディア芸術祭大賞を受賞しました。

アニメーション制作はシャフトで、2016年10月8日から全22話が放送されました。画面演出で心理状態を描く方法をとっているので、原作の余白を別のやり方で移した例としてよく挙げられます。

将棋のルールを知らなくても読めます。盤上で何が起きているかは表情と解説で十分に伝わりますし、この漫画が実際に扱っているのは勝敗ではなく、負けた人が翌日に何を食べるかのほうです。

桐山零 キャラクター画像
十七歳のプロ棋士、桐山零、AniList
川本あかり キャラクター画像
零を気にかける川本あかり、AniList
川本ひなた キャラクター画像
次女の川本ひなた、AniList
島田開 キャラクター画像
棋士の島田開、AniList