浦沢直樹の『PLUTO』は2003年9月9日にビッグコミックオリジナルで始まり、2009年4月1日に完結しました。全65話、単行本で8巻です。原案は手塚治虫が1964年に描いた『鉄腕アトム』の一編で、手塚眞が監修、長崎尚志が共同構成に入っています。原作でアトムが立っていた中心の位置を、この版ではユーロポールのロボット刑事ゲジヒトが引き受けます。
事件はスイスの山岳ガイドロボット、モンブランが破壊された姿で見つかるところから動き出します。続いてロボットの権利を訴えていた人物が殺され、どちらの現場にも角のような物が遺体のそばに立てられていました。ゲジヒトは世界最強とされる7体のロボットが順に狙われていると気づきますが、自分もその7体の一人です。ミステリーの骨格を使いながら、作品が繰り返し戻ってくるのは記憶の扱いです。消せないものを抱えた機械がどうなるのか、憎しみを覚えた機械が何になるのか、という問いが軸にあります。
戦争が終わっても残る記憶、加害と被害が一人の中に同居する場所が、人物ごとに違う形で置かれています。少年漫画の一編を大人の物語として描き直した例として挙げられることが多いのはそのためです。2023年にはアニメーションにもなりました。8巻という分量は一気に読み通せる長さで、『鉄腕アトム』を読んでいなくても問題なく追えます。



