ユン・テホの『苔』(原題: 이끼、日本公開の映画題は『黒く濁る村』)は、作者にとって最初のウェブトゥーンです。2007年1月15日に有料マンガウェブジン「マンキク」で連載を始めたものの、ウェブジンの閉鎖で中断。2008年8月にDaumで連載を再開し、2009年7月2日に全80話で完結しました。単行本は2008年1月に第1巻が先に出て、2010年7月に韓国データハウスから全5巻で完結しています。物語は、連絡を絶って暮らしていた父リュ・モクヒョンの訃報を受けたリュ・ヘグクが、父が晩年を過ごした人里離れた村を訪ねるところから始まります。村長チョン・ヨンドクと村人たちは表向きは親切ですが何かを隠しており、ヘグクは父の死を掘り下げるうちに、この村がつくられた経緯そのものを疑うようになります。日の当たらない場所に静かに広がる「苔」という題が、この村をそのまま言い表しています。
ユン・テホは紙のマンガからウェブトゥーンへ移ってきた世代の作家です。2024年7月のインタビューで彼は、『苔』を描きながら縦スクロールの演出に慣れるのに「本当に苦労した」と振り返っています。次作『未生』では、先にページ単位で描いてから縦に分ける方式に変えたそうです。『苔』にはその試行錯誤がそのまま残っていて、長い呼吸で人物の表情と沈黙を積み上げていくスリラーとして、いま読んでも古びていません。
映画は2010年7月14日に韓国で公開されました。カン・ウソク監督が演出し、チョン・ジェヨンが村長チョン・ヨンドク、パク・ヘイルがリュ・ヘグク、ユ・ジュンサンが検事パク・ミヌク、ユソンがイ・ヨンジ、ユ・ヘジンがキム・ドクチョンを演じました。上映時間163分、青少年観覧不可の等級にもかかわらず335万人を動員しています。同年の第31回青龍映画賞で監督賞・主演男優賞(チョン・ジェヨン)・助演男優賞(ユ・ヘジン)を受賞し、第47回大鐘賞では監督賞・撮影賞・音響技術賞・美術賞を受けました。村のセットは全羅北道の茂朱に建てられ、日本では同じ年の11月20日に『黒く濁る村』の邦題で公開されました。
いまこの作品が再び話題に上る理由はドラマです。ユン・テホは2024年7月のインタビューで『苔』のドラマ脚本を自分で書いていると明かし、2025年8月のインタビューでは、カンフルが『ムービング』と『照明店』の脚本を自ら書いたことに刺激を受けたと語り、製作会社とプリプロダクション、つまり撮影前の準備段階にあると話しました。連載当時、俳優パク・ヘイルを思い浮かべて描いた人物がいるとしつつも、「欲しい俳優はいるが、決まったことはまだ何もない」とも述べています。2026年8月現在、プラットフォームや編成が確定したという発表はありません。なお、ユン・テホは2026年3月1日、柳韓洋行の創業者ユ・イルハンの生涯を描いたウェブトゥーン『NEW イルハン』をカカオページで協業作品として発表しています。
原作はカカオウェブトゥーンで第1話から読め、英語版はToomicsにあります。映画を見た人なら、163分に収まりきらなかった村人たちの事情がウェブトゥーンでどう描かれているかを見比べながら読めます。(2026年8月21日時点)


